賀川豊彦の畏友・村島帰之(137)−村島「アメリカ巡礼」(2)

「雲の柱」昭和7年8月号(第11巻第8号)への寄稿分です。 アメリカ巡礼(2) サンペトロの日本人漁村を訪ふ 村島帰之 (承前) サンピトロ サンピトロの海岸に近づくと、石油タンクが見え出した。西田さんはこれが重油のタンクで、日本海軍の特務艦がわざわ…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(136)−村島「アメリカ巡礼」(1)

「雲の柱」昭和7年8月号(第11巻第8号)への寄稿分です。 アメリカ巡礼(1) サンペトロの日本人漁村を訪ふ 村島帰之 九月二十六日 賀川先生が出立されて了ふと一時に疲れが出てかがっかりして了ふ。殆どなす事なくじて過す。 先生シカゴ安着の報来る。 二…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(135)−村島「アメリカ巡礼」(6)

「雲の柱」昭和7年7月号(第11巻第7号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(6) 羅府を中心にして 村島帰之 (承前) カガワストリート 今度は海岸沿ひのハイウエーを走る。サンマ―ランド付近では石油のやぐらが海中に沢山に立ってゐた。海の中から石油…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(134)−村島「アメリカ巡礼」(5)

「雲の柱」昭和7年7月号(第11巻第7号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(5) 羅府を中心にして 村島帰之 (承前) オールドミッション オールドミッションは、加州が未だスペインの領地であった頃建てられたフランシスカンの教会で、加州には現在三…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(133)−村島「アメリカ巡礼」(4)

「雲の柱」昭和7年7月号(第11巻第7号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(4) 羅府を中心にして 村島帰之 (承前) 加州大學講演 二十三日 先生は前夜ポモナの講演をすませて、ハリウッドに引返し、同夜はハンター氏方に一泊、けさは七時半から加州大…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(132)−村島「アメリカ巡礼」(3)

「雲の柱」昭和7年7月号(第11巻第7号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(3) 羅府を中心にして 村島帰之 (承前) 二十二日 七時起床。聖オーガスチィンの彫刻のある扉を押して食堂に入る。私たちのためにこしらへてあったテーブルは、日々ミラー翁…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(131)−村島「アメリカ巡礼」(2)

「雲の柱」昭和7年7月号(第11巻第7号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(2) 羅府を中心にして 村島帰之 (承前) ミッション・イン リバーサイド教会の高橋牧師や柴田さんの案内で、有名なミッション・インへ行く。(インといふのはホテルとほぼ同…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(130)−村島「アメリカ巡礼}(4)

「雲の柱」昭和7年7月号(第11巻第7号)への寄稿分です。 アメリカ巡礼(1) 羅府を中心にして 村島帰之 九月二十日(日曜) 眼をさますと汽車の中だ。八時、ロサンゼルス着。小川牧師や、前夜自動車でサンチアゴから夜道を帰羅した高橋さんや、大坪さん…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(129)−村島「アメリカ巡礼」(3)

「雲の柱」昭和7年6月号(第11巻第6号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(3) ロサンゼルス其の他(二) 村島帰之 (前承) 賀川先生病む 七時から説教。その前に先生がトイレットへ行かれると、心配してゐた腎臓から到る小量の出血があったといふの…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(128)−村島「アメリカ巡礼」(2)

「雲の柱」昭和7年6月号(第11巻第6号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(2) ロサンゼルス其の他(二) 村島帰之 (前承) インペリアル・バレー 十八日 眼を覚ましたのは六時、昨夜は暑熱を怖れて、全部の窓を開け放って網戸だけで寝たのだが、暁方…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(127)−村島「アメリカ巡礼」(1)

「雲の柱」昭和7年6月号(第11巻第6号)への寄稿分です。 アメリカ巡礼(1) ロサンゼルス其の他(二) 村島帰之 コーチュラ 正午、セントラルステーションから汽車でコーチュラに向ふ。山崎、堀越両牧師、平田ドクトル等が送られる。小川さんは仕事が山…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(126)−村島「アメリカ巡礼」(4)

「雲の柱」昭和7年5月号(第11巻第5号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(4) ロサンゼルスその他 村島帰之 (前承) 義勇伝道会 十六日 六時の早天祈祷会。先生の講演は「基督の十字架」について。 先生は会衆に向かって南加五万の同胞に対し、教役者わ…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(125)−村島「アメリカ巡礼」(3)

「雲の柱」昭和7年5月号(第11巻第5号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(3) ロサンゼルスその他 村島帰之 (前承) ウイルソン天文台へ 十時から牧師諸君と一緒にウイルソン天文台行。十二人乗のバスは牧師ばかり(但し私一人だけは例外)で占領されて…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(124)−村島「アメリカ巡礼」(2)

「雲の柱」昭和7年5月号(第11巻第5号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(2) ロサンゼルスその他 村島帰之 (前承) 古谷福松氏 午後二時、これでやっと釈放されて、午餐を頂きに徳牧師宅に向ふ。小ぢんまりしたコテーヂに、本が山のやうに積れてゐる。…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(123)−村島「アメリカ巡礼」(1)

「雲の柱」昭和7年5月号(第11巻第5号)への寄稿分です。 アメリカ巡礼(1) ロサンゼルスその他 村島帰之 九月十三日 午前十一時五十分、私たちを乗せた飛行機は予定よりも十分ほど遅れて、ロサンゼルス市を距る十三哩のグランドセントラル飛行場に着く。 …

賀川豊彦の畏友・村島帰之(122)−村島「アメリカ巡礼」(7)

「雲の柱」昭和7年4月号(第11巻第4号)への寄稿、最終回です。 アメリカ巡礼(7) 太平洋沿岸 村島帰之 (承前) ベーカースフィールド 十二日 朝七時起床。八時、またもやフレスノを立って自動車で百二十哩をベーカースフイルドに向ふ。前日の森氏のドラ…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(121)−村島「アメリカ巡礼」(6)

「雲の柱」昭和7年4月号(第11巻第4号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(6) 太平洋沿岸 村島帰之 (承前) 野放しの熊に會ふ 夕飯前の一刻を、自動車で散歩に出ると、森の中の道路で、はからずも一匹の熊がノコノコ森から出て来るのに會ふ。私が試みに…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(120)−村島「アメリカ巡礼」(5)

「雲の柱」昭和7年4月号(第11巻第4号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(5) 太平洋沿岸 村島帰之 (承前) スタクトン まづスタクトンの支那人街のあるレストラントへ着く。ここで歓迎會が催されるのだ。 農業大會で思はぬ時間をとられたので、會衆は…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(119)−村島「アメリカ巡礼」(4)

「雲の柱」昭和7年4月号(第11巻第4号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(4) 太平洋沿岸 村島帰之 (承前) 南加農業者大會 九月九日 午前七時からホテルの直ぐ前の教會で感謝祈祷會を持つ。早朝だのに一杯の參會者だ。賀川先生は「パウロの祈り」につ…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(118)−村島「アメリカ巡礼」(3)

「雲の柱」昭和7年4月号(第11巻第4号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(3) 太平洋沿岸 村島帰之 (承前) サクラメント 八日 朝から荷物を片付ける。桑港は来月もう一度ゆっくり訪れるとして、けふ午後、先生のお伴をして中部加州方面を巡回するため…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(117)−村島「アメリカ巡礼」(2)

「雲の柱」昭和7年4月号(第11巻第4号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(2) 太平洋沿岸 村島帰之 (承前) 桑 港 オークランドからフェリーに乗替る。隣りの白人の娘二人も乗替だ。私は彼女たちの好意に酬いるために、紙でカブトを折って与へた。彼女…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(116)−村島「アメリカ巡礼」(1)

「雲の柱」昭和7年4月号(第11巻第4号)への寄稿分です。 アメリカ巡礼(1) 太平洋沿岸 村島帰之 再び米大陸を横断 九月四日 眼がさめたら私は米大陸横断列車の中にゐるのだった。コーンの畑がつゞく。平凡な汽車の旅だ。 夕方になって、あたりの景色が三…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(115)−村島「アメリカ巡礼」(8)

「雲の柱」昭和7年3月号(第11巻第3号)への寄稿、最終回です。 アメリカ巡礼(8) 村島帰之 (承前) バーレスキュー見物 夜は大原夫妻の案内で、アポロヘ「バーレスキュー」を見に行く。さすが、エロを賣り物にする見世物だけに、女子は稀れで、男も老人…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(114)−村島「アメリカ巡礼」(7)

「雲の柱」昭和7年3月号(第11巻第3号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(7) 村島帰之 (承前) 市営公衆浴場 私たちはそこを去って、直ぐそばの公衆浴場 Public bath of City New-York を見る。石鹸タオル持參の者は無料。それを借りるものは五銭を支…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(113)−村島「アメリカ巡礼」(6)

「雲の柱」昭和7年3月号(第11巻第3号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(6) 村島帰之 (承前) マージー百貨店 二十八日 午後からマージー百貨店へ買物に行く。今井さんの忠告でトランクを一個買ふ。九弗。それから真理子のために人形を一つ。 拾銭店…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(112)−村島「アメリカ巡礼」(5)

「雲の柱」昭和7年3月号(第11巻第3号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(5) 村島帰之 (承前) 動 物 園 へ 二十五日 たまってゐた日記を整理して、書留で内地へ送る。 昼飯はホットケーキとミルクで済ます。ニューヨークへ来て以後、最も安価な昼飯で…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(111)−村島「アメリカ巡礼」(4)

「雲の柱」昭和7年3月号(第11巻第3号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(4) 村島帰之 (承前) 赤煉瓦の旧市街 みちすがら、旧市街を通ると、赤い煉瓦建の多いのが目につく。聞けば、これはワシントン以前からの建物で、英國から移住した人々が、郷里…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(110)−村島「アメリカ巡礼」(3)

「雲の柱」昭和7年3月号(第11巻第3号)への寄稿の続きです。 アメリカ巡礼(3) 村島帰之 (承前) リンコルン記念堂 車はその記念塔の周囲を一周した後、ゴルフリンクスの前を通り、大きな堂の前に止った。「リンコルンの記念堂です、下りて見ませんか」…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(109)−村島「アメリカ巡礼」(2)

「雲の柱」昭和7年3月号(第11巻第3号)への寄稿です。 アメリカ巡礼(2) 村島帰之 (承前) 北米合衆国政廳 街路樹の上に、白い大きなドームが見える。それがキヤピタルであらうことは直ぐ想像出来た。車は雨に洗はれた美しいアスファルトの道をすべるや…

賀川豊彦の畏友・村島帰之(108)−村島「アメリカ巡礼」(1)

「雲の柱」昭和7年3月号(第11巻第3号)への寄稿分です。 アメリカ巡礼(1) 村島帰之 ワシントン市 八月二十二日 けふはワシントンに出かけやうといふので、今井さんと二人、九時十分、ペンシルバニアーステーションへかけつける。夏季中に土曜から日曜へ…