第3次東日本大震災被災者仮設住宅自治会訪問―第9回

2013年9月10日、午前中の訪問先、若林区の「東通仮設町内会」と宮城野区の「岡田西町仮設自治会」での懇談を終えて、仙台市内最後の仮設、太白区の「あすと長町仮設住宅」に向かいました。

お約束の午後1時前に仮設近くの食堂に入り急いで軽いお食事。(ここで仙台市内のドミニコ会のシスターさんーー被災された友人のサポートなどされ、ひょんなことから小さな交流がはじまっているお方ーーにお電話を差し上げたのですが、あいにくこの時間授業中で連絡がとれませんでした。おってメール便をいただきました。)








ここには1DKが42戸、2DKが149戸、3Kが42戸、合計233戸の仮設住宅が建てられていて、宮城県内だけでなく岩手県福島県からの被災者がばらばらに、450人の方々が入居されていたようです。

集会所には手書きの仮設新聞や諸行事のポスターなどあって、数枚寫しました。






この仮設団地には当初「運営委員会」がつくられていましたが、2012年3月に「あすと長町仮設住宅自治会」が結成され、今回は会長で「あすと長町共助型コミュニティ構築を考える会」の代表でもある飯塚正弘さんと地域計画研究所顧問の阿部重憲さんとお会いできました。



ここでも私以外の3人は再会ということであって、仮設住宅の今の暮らしと自治会活動、そして当面する諸課題について、意見交換ができました。

飯塚さんからは、次のようなお話がありました。

ーーー自治会ができていま1年半、ここの暮らしはようやく落ち着いてきているように思う。以前は週に1度は救急車がきていたが、いまは一度も来ていない。それは昨年6月から近くの長町病院と自治会が協力して「健康相談会」がもたれ、相談会に出てこれないお宅にもケアマネさんやコミュニティワーカーなども連携して、個別に訪問してもらっているのも、健康状態が落ち着いてきている要因と思われる。

――ーいま問題がおおきくなっているのは、仮設内の近隣トラブルで、特に音に関するトラブル。自治会としては、必ずふたりでお訪ねして双方のお話を聴いて解決にあたっているが、だんだんと問題の質も変わっている。

ーーー当初233戸あったものが、現在では185戸に減っている。みなし仮設の実態はよくわからないが、居住期限がすぎてそこからの新しい入居者も結果的には2世帯だけだった。

ーーー復興公営住宅を希望する4000戸ほどのところに、現在は900戸ほどでまったく足らない。この前の選挙の折には、ここで「要望の住宅は責任を持って建てる」という公約を現市長はしているので、この確約の実現を期待している。

ーーー心配しているのは、復興公営住宅が出来上がり、たぶんここから約半数はぬける、抜けた時の「取り残された感」が非常に大きくなっていく。自立できる人や復興公営住宅や集団移転先へ移れる人はいいとして、この仮設住宅から出ることのできない方々が残って、自治会の機能も停滞していくのではないか。

ーーーいま「絆支援員」も緊急雇用として常駐しているが危機管理という点では不十分で、その下支えを自治会が行っているが、現状のままではそれも不十分である。それは自治会の活動費として国レベルの支援がないので強く要望出しているがまだ実現していない。区役所では現場に出ているので連携は密であるが、こうした自治会の要望を本庁に提起しても、どうしてもそこでは机上のこととなる。

ーーーここでは、子供は少なく、残っているのは高齢者ばかり。これらの人たちの自立していく先は、どうしても公的な災害公営住宅へ希望をつなぐ以外には選択肢はなくなる。この不安を解決するためには、現状のままの復興計画は一度破綻する。

ーーーさいわい、この自治会の周辺の町内会の人々はいつも好意的で、お互いの交流が続いている。見えない壁はあると思うが、今後もひとつひとつ、直面する課題に向かっていきたいと思う。前回届けてもらった「阪神・淡路大震災被災者から東日本大震災被災者への伝言―仮設を新しいふるさととよべるように」に書かれていた「10か条」は、ボクのバイブル。これまでやってきたことは間違っていなかったのだと、確信が持てた。あの冊子には涙が出た。

ーーー「私の希望は、みんなの住まいが決まって、ここから巣立って行ってもらいたいこと。最後の一人まで、私は見届けます」と、いまも心に決めています」


同席の地域計画の専門家・阿部さんも、仙台市内に在住で、飯塚さんのよいお仲間のようで、神戸からお訪ねした代表の本多昭一先生とも深い繋がりがあって、ここでも貴重なお話を伺いました。


最後にあと数枚、飯塚さんの御顔と共に収めてさせていただきます。







私たちの茨城県での今回の仮設訪問はここが最後となり、ここをあとにして一路、福島県いわき市まで夜までに自動車で移動することにしました。