「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(49)シュバイツァー「原生林の片隅にて」を読む


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KAGAWA GALAXY吉田源治郎・幸の世界」(49)


http://k100.yorozubp.com長期連載(150回)補充資料


第5回 「シュバイツァーの「原生林の片隅にて」を読む」(20)
吉田源治郎訳 シュバイツァー著『宗教科学より見たる基督教』
(原題『世界の諸宗教と基督教』)付録。大正14年9月8日、
警醒社書店より刊行


 シュワイチェルの「原生林の片隅にて」を読む


                               吉田源治郎


          十三 苦痛の印記を帯ぶる人々の連帯


      (この項、前回のつづき)


 過去十五年間の、熱帯病に対する製薬の進歩は、文明の域外に住む人々の苦患を救う上に奇跡的の力を現すやうになった。これは、我々に向かっての一つの召喚ではないか?


 私自身のことを云へば、一九一八年以来、身体を壊してゐたが、二回手術を受けた結果、健康もすっかり回復した。そして又、講演と演奏会の催しに依って、戦時、私の仕事を支えるために拵えた負債も全部償却出来た。私は、再び、アフリカへ行く。そして私の仕事を再興するつもりだ。


 私の始めた仕事は、大戦のためにスッカリ台無しにされた。私を後援していて呉れた二国の人々は、大戦後取りつき場のない程、きっぱりと二つに割かれてしまった。そして、我々のためにもっと助力をしてくれるつもりでいた人々の或る者は、戦争のために財貨をスッカリ失ってしまった。今日、資金を得ることは、一層むずかしい。経費も、以前の三倍はかかろう。然し、私は、今、我々の仕事を、慎み深く再計画中である。


 私は、勇気を少しも阻喪せぬ。私の見聞して来た人間の悲惨は私に力を与え、同僚に対する信頼は、私に将来の期待を与えてくれる。唯、望むところは、自分が病苦から救われたがために、同じ,苦患に悩める多くの人々の要求に進んで応答する多数の人々を発見したいことである。


 更に私の望むところは、世界の多くの医師の中から、私の以外に、幾人も幾人「苦痛の印記を帯ぶものの一団」の手に依って、世界の各地に、その要求のあるまゝに派遣されるに至らんことである。』


 シュワイチェルは、此暗示する所多き著述―ー「原生林の片隅にて」を、フランス国ストラスブルヒのセントニコルス牧師館で、一九二十年の八月に書き終えている。


      (つづく)