「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(45)シュバイツァー「原生林の片隅にて」を読む


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KAGAWA GALAXY吉田源治郎・幸の世界」(45)


http://k100.yorozubp.com長期連載(150回)補充資料


第5回 「シュバイツァーの「原生林の片隅にて」を読む」(16)
吉田源治郎訳 シュバイツァー著『宗教科学より見たる基督教』
(原題『世界の諸宗教と基督教』)付録。大正14年9月8日、
警醒社書店より刊行


 シュワイチェルの「原生林の片隅にて」を読む


                               吉田源治郎


          十 原生林の社會問題


 中央アフリカ原生林にも社會問題のいくつかを数えることが出来る。労働問題がその一、植民政策と文明輸入の問題がその二、土人の教育がその三、多妻主義と売買結婚の風習の問題が四、黒人対白人の問題がその五、この他アルコホル悪(主としてラム酒の輸入、それの輸人税が植民地政府の収入の主要な財源となっている。)――の問題も閑却してはならぬ。土人の無責任、監督の目なしには労働を回避すること、――友情的親愛のみではどうしても、始末がつかぬことが起こる。


 ミッション幹部の一人で、ロバート君と云うのが、数年前ラムバレンを去って、土人の村近くに、家を建てて、土人の兄弟として、彼等の村の一員として住んだことがある。所で、その日から、彼の生活は、惨めなものとなった。黒人と白人と云ふ社会的間隔を全然放棄して、村の兄弟の一人となったことに依って、彼は、それまで持っていた一切の感化力を失った。最早や、彼の言葉は白人の言葉として土人い間に通らなくなった。そして何でもないことに一々土人と議論しなくては、彼の言葉は容れられなくなったと云ふ実例がある。


 勿論、目然人、誤りなき生まれ乍らの直観力に依って、白人の品性の高下を立ち所に見貫く。だから、道徳的にしっかりして居れば、自然、土人の信服を得ることが出来る。然し此点に少しでも欠けていると、いくら表面的に権威を示しても、土人は、心から、なついで来ない。


     (つづく)