「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(41)(シュバイツァー「原生林の片隅にて」を読む」

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KAGAWA GALAXY吉田源治郎・幸の世界」(41)


http://k100.yorozubp.com長期連載(150回)補充資料


第5回 「シュバイツァーの「原生林の片隅にて」を読む」(12)
吉田源治郎訳 シュバイツァー著『宗教科学より見たる基督教』
(原題『世界の諸宗教と基督教』)付録。大正14年9月8日、
警醒社書店より刊行


 シュワイチェルの「原生林の片隅にて」を読む


                               吉田源治郎


          八 自然人とイエスの勝利


 基督教が此等の原生林の住民にどんなに響き、どんなに諒解或は誤解されてゐるか? キリスト教は、未開人にとっては、高級すぎると云ふ反対がある。そう云ふ反対が欧州にぬる時に屡々シュワイチェルを悩ました。然し、彼は、約五年を土人の間に生活した結果、大胆にその反対の根拠のないことを弁駁しでゐる。


『第一に、自然の子は普通考へられでゐる以上によぐ考へる。勿論読み書きもしないけれど、彼等は色々の事実に対して深い思考をめぐらす。彼は、ある時治療を施した老人と生命の究極に関して会話を交え深い感銘を受けた。土人と共に、我々の相互関係、人類との関係、宇宙との関係、無限との関係について語り合ってゐると、白色有色の差別、教養、無教育の差異がなくなる。


「黒人は我々よりも深刻ですね」と或時友人の白人が私に云った。そして彼は「新聞を読まないからだ」とその理由をつけ加えた。此友人の述語は、或る真相を含んでいる。』 彼等は、キリスト散の歴史的要素や教理的要素に関しては、無関心でもあり、叉解させるに容易でないが、宗教のエレメンタルなものを握る自然の能力を驚くばかりに豊富に持っている。


 『キリスト教は彼等にとって、恐怖と暗黒を破砕する光明だ。神の意志が世界に生起する一切を統制することを信ずることが、彼等は之れ迄その支配下に、たたりを恐れてゐた自然精霊、祖先の霊、色々のフェチッシュ、意地悪い他人の呪いの力、そんな恐怖の的からの解放を確かめる。死については、殆ど無関心だ。未来観念は彼等の宗教には、何の役目をも持たぬ。自然の子にキリスト教は、イエスによっで啓示された、生命と世界の道徳的見解以外の何物でもない。それは、神の國と神の恵みを教ふる一体系である。』

    (この項つづく)