「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(40)(シュバイツァー「原生林の片隅にて」を読む


上の版画は岩田健三郎さんの作品です。パソコンの不調のため同時進行のブログ「岩田健三郎画文集」をお休みしていましたが再スタートいたしました。http://deainoie.fukuwarai.net/



KAGAWA GALAXY吉田源治郎・幸の世界」(40)

http://k100.yorozubp.com長期連載(150回)補充資料


第5回 「シュバイツァーの「原生林の片隅にて」を読む」(11)
吉田源治郎訳 シュバイツァー著『宗教科学より見たる基督教』
(原題『世界の諸宗教と基督教』)付録。大正14年9月8日、
警醒社書店より刊行


 シュワイチェルの「原生林の片隅にて」を読む


                               吉田源治郎


         七 兄弟感の体験


の薬局と治療室には夫人が付き添って、朝の十時から十二時まで、助手のジョセフを指圖して、午後の手術の準備や、室内整理をする。外科手術のある時には、病人の麻酔の世話をみな夫人がやる。


 『手術がすんだ。薄暗い病室の一隅で、私は病人が目を覚ますのを待っている。少し意識が戻ると、病人は、キョトンとした目付をしで自分の周囲を見回す。そして、幾度となく繰返しで叫ぶ――

 『もう苦しくない。苦しくない――……病人の手が私の手をヂット握って離さない。そこで私は、彼とそのまはりにゐる人々に向って静かに話す。主イエスがドクトル夫妻をオゲオヱに行ぐやうに差し向けなさたのだ。そして、ヨーロッパの白人たちが後援して、自分たちをここえ送って、病苦に悩んでいる人を救済するやうに計らってくれたのだ。聞かれるまゝに、私は叉親切な友人のこと、どうしてその人たちがここの土人の病苦のことを知るやうになったかなどを話しする。コ−ヒー林のしげみを洩れるアフリカの斜陽が、暗い室内にかすかな光を送る。そこには、我々――黒人と白人とが膝つき合わせて腰かけ乍ら、イエスのことば――『汝等は皆兄弟なり』の意味を経験によって体感するのである。 故國の私の友人たちが、ここに来てかかるひとときを味わうことが出来たら!』


と彼は敬虔とイエスの愛に燃へた目常生活の一節を記している。