「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(39)シュバイツァー「原生林の片隅にて」を読む


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KAGAWA GALAXY吉田源治郎・幸の世界」(39


http://k100.yorozubp.com長期連載(150回)補充資料


第5回 「シュバイツァーの「原生林の片隅にて」を読む」(10)
吉田源治郎訳 シュバイツァー著『宗教科学より見たる基督教』
(原題『世界の諸宗教と基督教』)付録。大正14年9月8日、
警醒社書店より刊行


 シュワイチェルの「原生林の片隅にて」を読む

                 
           吉田源治郎


         六 恐ろしい睡眠病


 尤も恐しいのは、睡眠病である。これに罹ると最初は、不規則な発熱を覚える。次に、高熱が続いて頭痛をする。彼の所へ此の病人が来るときまったやうに、『先生、私の頭が、私の頭が――もう辛抱出来ません、死なして下さい』と云ってよく叫ぶ。病が重なると、苦しい不眠の夜が続く。ある者は発狂する。それでなくても譫言を云ふやうになる。更に病勢が進むと昏々として眠りに落ちる。そして、其儘痩せほほけて、死んでしまふ。


 此病気の傅播は、日中にのみ飛ぶグロツシナ・バルバリスといふ蝿の種類の仲介によつてなされる。病原虫は、ツリバノソマタ(穴をうがつものの意)と呼げれる寄生虫だ。蝿の外に蚊も叉此病原蟲を運ぶ。かくの如ぐ昼間はグロツンナが、夜中は、蚊が睡眠病の傅播をせつせとする訳だ――。


 之の治療には、病原蟲が血管にゐる間に、アトキシイル(砒素とアニリンとを含む薬品)を注射して殺さなくてはならぬ。病原蟲が脊髄にはいり込んでしまへば、殆ど治療の見込みはない。


 此外に、油断してゐるとすぐやられる日射病がある。もし無帽子で戸外へ出たらそれこそ生命がけだ。屋根裏の方から洩れる少量の太陽の光線に触れてもすぐやられる。そして高熱に苦しむ。


    (つづく)