「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(38)シュバイツァー「原生林の片隅にて」を読む


山口県光市<島田川>」(今日のブログ「番町出合いの家」http://plaza.rakuten.co.jp/40223/ より)


KAGAWA GALAXY吉田源治郎・幸の世界」(38


http://k100.yorozubp.com長期連載(150回)補充資料


第5回 「シュバイツァーの「原生林の片隅にて」を読む」(9)
吉田源治郎訳 シュバイツァー著『宗教科学より見たる基督教』
(原題『世界の諸宗教と基督教』)付録。大正14年9月8日、
警醒社書店より刊行


 シュワイチェルの「原生林の片隅にて」を読む

                           吉田源治郎


            五 原生林に於ける人間苦


 『私は、最初九ヶ月に二千人の病人を収扱った。殆んど凡ての欧洲の病気は、こゝに代表されてゐる。私はある子供が百日咳にかかるのをさえみた。蟲様突起炎(アッペンヂシチス)と癌種だけにはまだ、出くはさない。多分、この二つは、まだ此処の土人に輸入されてゐないのであらう。


 乾季の始め頃には、悪性の塞冒が大流行――丁度、英国でで歳晩の真夜中聖曾にでも出席した時のやうに。ラムバレンの教会では、其頃くさみやせきのしはぶきが盛んに聞こえ始める。無数の子供が肋膜炎で死ぬ。土人が川狩に大挙して出かける頃には年寄たち肺炎で死ぬ。それは砂原でキャンプライフをやるためだ。


 それからよくあるのが、レウマチス痛風。始めの頃病因不明で困ったのは、激烈な便秘とそれと同時に現れる神経攪乱である。研究の結果それは、煙草過用からくる恐ろしいニコチン中毒の症状であることが分かった。この中毒は、婦人の間に多い。


 助手のジョセフの話によると、土人不眠症に苦しむものが多くて、麻酔をするために夜通し煙草を飲むのださうである。それは、アメリカやら輸入されるのニコチン含有量の極めて強い葉煙草である。


 ここでは、此の葉巻の一葉は――半ペニー位の値段だが――パイナップル二つと交換ができる。そして、ほとんど貨幣の代用をさえ務める。旅に出る時には、金でなく――そんなものは、森の中では不通――葉煙草の箱を抱えて行く。そして、必要に応じて途々、食べ物と交換して行く。


 旅は主としで、カヌーの舟旅であるが、舟子に二葉の煙草を奨励として約束するならば、一、二時間はきっと早く目的地に着く。』


 シュワイチェルは、かうして、内科も外科も――脱調の手術も又、歯科医の仕事もやる。


  (つづく)