「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(27)
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http://k100.yorozubp.com長期連載(150回)補充資料
第3回 保育に於ける自然研究(15)
『子供の教養』(昭和14年11月号)
保育に於ける自然研究
吉 田 源 治 郎
五、保育に於ける自然研究、幼児への自然教案実施について
(この項は、前回のつづき)
(5) 幼児への岩と土との教え方 その注意としては、
1 環境が狭少なること
2 標本採集
3 小石ひろひに河原へいく
4 旅行先から、小石、砂等をもって帰らせる
5 先づ五種をおしへる
磽石−長石−石英―輝石―角閃町(その他約二十種を教へる)
結晶体の教え方
六葉三十二体の結晶体を必ず教へる(これが物質構造の基本であるか ら)それには
実物を見せる
豆細工をする
切紙、折紙にして
教室に模型をつり、之れを遊戯化する
土の教へ方
箱庭あそび
植木鉢いぢり
肥料のやり方をおしへる
(肥料)―硫酸アンモニヤ、過燐酸石 灰、灰の効用を教へること
土の性質を見分けさす
砂が多いか
石が多いか
色はどんなか
水分が多いか
盆石をつくらせる
(6) 幼児への動物の教へ方
1 家庭水族館をつくること
2 家庭動物園をつくること
海岸毎年潮干狩に行く。(動物は海から出て来た、海の外、原始動物は研 究出来ない。)
池、川、山の動物を実際にみせる
小動物を飼育させること
動物の工作を見せること
くも、あり、はち等々
動物の互助愛を教える
みつぱち、ありについて
動物の美を見せること
(7) 自然物の取扱ひ方
自然化――
単純化
主要件摘出
統一化(系統的に一一科目)
総合化(宇宙的統一へ)
具体的
恩物化
人間との連絡――人間への効用を教え
宇宙的神秘――事物の可能性(不思議を教える(宗数々育的に)
結びの言葉
私は唯漠然と自然研究の必要を説くのではない。一つは、子供の性格教育の立場から、一つは知識教育の立場から、又精神衛生から力説するのである。
自然を失った子供が如何に悲惨であるかは、マイケル・ゴールドの小説「金にないユダヤ人」――そこではニューヨークのイーストサイドの子供達が建築の為に土が掘り返されたのを見て、其の土の中でころげまはる光景や、中央公園へ夜暗いときに一つかみの上を盗みに行く人の姿やペーヴメントの裂け目から咲いた一本の草花に水をやって愛護してゐたのが枯れた為に子供が病気になった話等が記されてゐる、――を見るまでもない。
哲學者カイザリングの言葉ではないが「嘗って幼少の時に於て。自然に接触しないものは、決して歴史的役割を果たす人物にはなり得ない」のである。人間資源の確保の必要の叫ばれる時、私はその見地からも保育に於ける自然研究の重要性を考えざるを得ないのである。
そして、幼児に宗教々育、情操教育を実施しようとする場合、「自然観察」の課題抜きにして、如何にして、それを完遂することが出来るであらうかと私は、借問したいのである。