「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(24)




KAGAWA GALAXY吉田源治郎・幸の世界」(24)


http://k100.yorozubp.com長期連載(150回)補充資料


第3回 保育に於ける自然研究(12)


『子供の教養』(昭和14年11月号)


            保育に於ける自然研究

                     吉 田 源 治 郎


          四、自然教育のいくつかの事例

 (この項前回につづく)

 
 (d)東京松沢幼碓園の場合


 ここは賀川豊彦氏が園長、大崎治部氏が主事であるから自然保育を中軸とした幼稚園であることは夙に有名である。


 園長が莫大な資金を投じて武蔵野に於ける野生の鳥の代表的なものを飼育し、全國的に鉱物の標本を集め、或は、四国の地質を代表する鉱物をもって作成した地質図を保育室の壁に掲げ、或ひは樹木の種類を適りとりそろへた「フレーベル館」といふ名称の博物館を設け、或ひはスエーデンの植物學者リンネの名に因んでリンネ植物園といふ植物界の代表者を木本、草本に亘りすっかり網羅した植物園を幼稚園の附近に設備し、小児の観察の便を圖ってゐる等、世界にも類稀なる幼稚園の一つであらう。


 何でも、東京の東洋英和女学校師範科では毎週土曜日午前中をこの松沢幼稚園に出掛けて園長や主事に親しく指導をうけてゐるといふ事である。


 叉この附近には武蔵野特有の雑木林があるので、子供述は秋になると毎日の様に森の中に入って行って殼斗科の木の実を拾ふ事を日課としてゐる。


 叉園児たちはこの附近の野外を一定の日に廻遊して其の興味と好奇心の目覚めるまゝに、好きな指導者から自然観察のコーチを受けてゐるとの事である。

     
     (つづく)