「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(23)



KAGAWA GALAXY吉田源治郎・幸の世界」(23)


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第3回 保育に於ける自然研究(11)


『子供の教養』(昭和14年11月号)


          保育に於ける自然研究


                    吉 田 源 治 郎


        四、自然教育のいくつかの事例

 (この項前回につづく)


 (c)大阪郊外のある幼稚園長○氏の場合


 之れは、直接、自然研究に開係はないのである。
 けれど嘗って、O氏は日露戦役の頃、軍人であったが、今は牧師で幼稚園長であるがO氏は毎金曜日自ら幼児達を引率して所謂園外保育――廻遊――に出掛けられる。


 ○牧師の曰く「子供と一緒に散歩してみると、子供の個性がよくわかるし、親子の様な親しみが湧いて来る。私は出来るだけ健康といふ立場から子供達を野原に連れ出す。そうして非常時下困難に耐へるといふ事を練習させるため、わざわざ平坦な路以外に坂道を登らせることにしてゐる。元気な子供達はとても喜んで、先生なんかを後に捨てゝおいて、どしどし馳け登って行く位であり、又私は父兄からの反對もあるけれど、木登りを奨励してゐる。


 母親の中には木のぼり等させて下さるなといふ人もあるが、私はさせた方が好いと思ってゐる。そしてやがて昼ともなれば、太陽の輝く草原に圓座をつくって弁当を開くのである」


 ――これは直接自然研究にふれたものではないが、フレーベルの強調してゐる散歩教育にあたるものであって、もし保母の中に自然観察の指導が出来る人があれば、どれ程好い自然研究の機會であるかと思ふ。序に云へば○牧師は、六十歳を既に越した、元気な方である。


    (つづく)