「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(21)




KAGAWA GALAXY吉田源治郎・幸の世界」(21)


http://k100.yorozubp.com長期連載(150回)補充資料


第3回 保育に於ける自然研究(9)


『子供の教養』(昭和14年11月号)


          保育に於ける自然研究


                    吉 田 源 治 郎


(前回に続く)


  
        四、自然教育のいくつかの事例


 (a)ニューヨークのテイーチヤース・カレツヂ附渇のホレースマン・スクールの幼稚園及び小學一年生に於ける自然研究の実際の記録は非常に示唆的である。(大阪市、ランバス女學院発行、高森富士子氏訳「幼稚園及び低学年に於ける行為課程」参照)


 ホレースマン・スクールの低學年では作業時間中に美術と工芸の課程があり其の中で粘土細工、木工、木版、砂いぢりがあつて、自然物に接触をしてゐる外に特に屋外に於ける自然研究を重要視してゐる。つまり幼児に出来得る限り自然観察を出来る様な環境を作ってゐるのである。


 それは四つの方面に分れてゐて、即ち(一)植物界(二)動物界(三)鉱物界(四)自然の力、例へばコロンビヤ大學構内の樹木を観察させたり青草の上であそばせたり、落葉かきをやらせて、落葉の種類わけをしたり、叉葉の名称や木の構造(葉、木、皮、形)を観察させてゐる。


 其の他野生及び栽培植物に注意させ、殊に野生の植物の種子の播布を観察させてゐる。叉屋内作業としては、球根を植える。植物の成長と日光、水、光の必要性、植物の世話のし方、種子、球根、葉、根、苔、花、土中及び水中に於ける稲子の芽生え、花や細い枝の美的鑑賞をさせてゐる。叉水盤其の他に生け花をさせたり人参、わさびの切株に生け花をさせたり、とうもろこし、豆、南瓜、大麦、金蓮花等の種子を土、わた、蚊帳布、吸取紙等を温床として播かせる。感謝祭の捧げものの種類分けをさせる。辨常の副食物として持って来る果物の名称を覚えさせる。


 見学としては、幼児を自然博物館や、コロンビヤ大學の各教室等へ連れて行く。叉風、太陽、光、水、岩石等の自然の力に親しく接触せしめて観察させる事に努力してゐる。


    (つづく)