「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(20)



KAGAWA GALAXY吉田源治郎・幸の世界」(20)


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第3回 保育に於ける自然研究(8)


『子供の教養』(昭和14年11月号)


            保育に於ける自然研究


                    吉 田 源 治 郎


(前回に続く)


  
       三 自然恩物といふ言葉について


 フレーベルは結晶学に興味を持ち、球体や立方体や方柱や正立方体、大三角体、小三角体、積木其の他を恩物と名付け、これによって字宙のある普遍的原理を象徴しやうとし、殊に恩物に於て表象せられたある神聖なる思想の法則に幼児を導入し様としたのであった。


 今日の結晶學はフレーベル時代に比べると長足のシンポをしてゐるが、矢張これが宇宙の根木原裡を表してゐるといふことは興味の深いことである。賀川豊彦氏の如きは、さう云ふネオフレーベル主義の立場から子供に根本的な観察をさせることを重要視してゐられる。


 私は恩物 giftといふ言葉を或る人々が応用してゐるのを見て戦慄を覚えるものである。即ち松笠に妙な加工を施して筏の船頭を作って自然御物といふ様な言葉を用ひるとすれば、これは正に冒涜である。むしろそれは自然玩具と称すべきものである。恩物はあくまでも宇宙の原理を表象するものでむしろ自然物、其の儘の姿に於て子供に観察させて結論は子供自身につけさせるのが好いと思ふ。


     (つづく)