「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(18)



KAGAWA GALAXY吉田源治郎・幸の世界」(18)


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第3回 保育に於ける自然研究(6)


『子供の教養』(昭和14年11月号)


           保育に於ける自然研究


                  吉 田 源 治 郎


(前回に続く)


         フレーベル「人の教育」よりの摘録


 宗教が表現し、語ってゐる所のものを、自然もまた提示し、表現してゐる。神に関する考察が教へるところのものを、自然は実証してゐる。内界の考察から得られるものは、また外界の考察から得られる。


 自然に関する真の理解、その生きた知識に達し得るのは、ただキリスト教徒のみである。即ち、キリスト教的精神、キリスト教的生命及び、キリスト数的努力をもって居る人のみである。さういふ人のみが、真の自然研究者たり得るのである。吾々が自然に関する真の知識に建し得る程度は……如何なる程度迄キリスト信徒であるかによって大凡定まるのである。即ち、萬物のうちには、生きた唯一の神の力が働いてゐるといふ真理を痛切に感じてゐる程度によって定まる。キリスト教徒は自分を支配し、また萬物の中に働くところの生ける唯一の神の霊に充たされ、またこの神霊によって全自然は存立するのであるが、人はこの唯一の霊によって、大にしては自然現象の全殼のうちに、神の本質と、その統一の姿とを洞見することが出来るのである。


 神の精紳は、自然の中に在って、そのうちに生きて働き、自然のうちから自巳を表現し自然を通して語り出で、自然のうちに、自然を通して発展するのである。


 人間は、殊に少年の時代に、自然とふかく親しむやうにされねばならぬのである。これがためには、吾々は少年を、自然の個々の現象や、その外形上の細かなことよりも、寧ろ自然の中に活きて居って、これを支配してゐるところの神の霊と接するやうにさせなければならぬ。……少年には自然を愛する心が、まだ毀されてゐない。それであるから、少年を教育者と結びつけ、生徒を教師と密接に結びつけるには、教師生徒が一緒になって、自然界、自然事物を互に熱心に研究することが最も有力な手段なのである。これは両親たる者も、學校の教師たるものも共に注意すぺきことである。そして教師は、少なくとも一週に一度は、各級の生徒を伴って野外に散歩したらよからうと思ふ。然し、これも、よく吾々が見受けるやうに、牧者が羊群を駆って行くやうな、また隊長が兵隊を引率して行くやうな調子でやってはならぬ。寧ろ、父が子供達と連れ立って行くやうな、または、兄が弟達を連れて行くやうな調子でなけれぱならぬ。そして教師は、自然や、四季の景色が生徒達に示すところのものを、一層明細に観察させ、理解させるやうにしなければならないのである。

    (つづく)