「KAGAWA GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」(14)



KAGAWA GALAXY吉田源治郎・幸の世界」(14)


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第3回 保育に於ける自然研究(2)


『子供の教養』(昭和14年11月号)



          保育に於ける自然研究


                     吉 田 源 治 郎


(前回に続く)


 我が國に於て、少年保護事業の先輩である留岡幸助氏は、少年が不良化するには二つの理由がある。一つは人格的要素の欠乏、今一つは自然的要素の欠乏である。即ち児童が環境として好い人格者を持たない事、及び自然への親しみを持たない事、それが彼等をして反社会的な非行少年たらしめるといふのである。


 私はこうした動機から大都会に住む幼児にとっての自然への接触及自然観察の重要性を痛感するものである。


 然らば、自然観察といふ事が現在どの程度に一般の幼稚園等に於て行はれてゐるか、といふに現在では相当それが普及してゐる模様で、まことに喜びに耐へない次第である。


 一例を挙げれば堺市保育会の今回の研究発表「和音感訓練と幼児の生活に就いて」を見ても、其の中に観察音感遊戯「春の観察」といふのがあり。叉東京市保育會の発表の「夏休み中の幼児指導の一試案」を見ても二十六日間の夏休みの作業の中に三十一項目に亘る植物、動物、自然の力等に関する(例へば果物、蛙、トンボ、雨、風、月、象、等々)のトピックが直接間接に含まれてゐる。叉大阪市保育會で新しく編纂された「幼稚園遊戯の傑育要諦」を繕いでも共の中に或ひは唱歌或はリズム遊戯の形で各種の自然風物にふれてゐるのである。


 そして、事実、各幼稚園で、作業、観察、談話、ゆうぎ、等により、或程度迄、幼児らの自然へのしたしみが考慮されてゐることは、云うまでもないことである。


     (つづく)