岩田健三郎さんの絵本『いのちが震えた』紹介(3)兵庫民報1995年6月18日


岩田健三郎さんの絵本『いのちが震えた』紹介(3)

  「兵庫民報」1995年6月18日


        


           岩田健三郎さんの絵と文


        「小さな出合いの家」鳥飼さん夫婦が出版
        失った以上の物もらった感謝に

 

 震災十日目に、スケッチ帳をもって神戸にたどり着いた姫路市在住の版画家・岩田健三郎さんが、須磨寺近辺の被災のようすを、絵と文で克明に描いた記録「いのちが震えた」が一冊の絵本になりました。発行元は鳥飼慶陽(兵庫部落問題研究所事務局長)・トモ子さん夫妻主宰の「小さな出合いの家」です。


 「この国は、この街は、いのちをどないにするのやろう」―岩田さんは崩れた町並みをたどりながら、人びとのようすをはり紙一つにいたるまで、かきとっています。そして、須磨の浜で出会った子どもたちが、岩田さんの歌う「あなたが夜明けをつげる子どもたち」に「おそろしいくらい、いのちを震わせて聴いていた」ようすもかいています。


 長田区で自宅全壊の被害にあい、岩田さんの見舞いを受けた鳥飼さん夫妻が、これらスケッチの下書きを見て、「たくさんの物を失ったそれ以上に、いっぱいの気持ちを全国各地からもらった感謝のしるしにしたい」と出版を申し出たものです。岩田さんは兵庫部落問題研究所発行の月刊誌「部落問題」で毎号「皮の河」のタイトルで、版画と短文を連載しています。


 出版を快諾した岩田さんは、鳥飼さん宅のネコで、いまも全壊の家に住み続けているピコをイメージしたネコを登場させ、全文を書き直しました。震災百日目を機にした出版で、付録として、これも岩田さん自筆の小冊子「震災から百日目」がついています。


 定価千五百円、問い合わせ=「小さな出合いの家」(兵庫部落問題研究所内)