『賀川豊彦と現代』紹介批評テキスト化分(11)落合重信『歴史と神戸』1988.Aug


賀川豊彦と現代』紹介批評紙誌(11)


      テキスト化分


      『歴史と神戸』第149号(1988年.Aug)


      賀川豊彦と現代 烏飼慶陽 
          B6判 204頁 昭63・5


                    落合重信


 賀川豊彦生誕百年が来る。ちょうど時宜を得た著書である。労働運動史上の再評価については『歴史と神戸』12巻4号で渋野純一氏に編集してもらっているか、今日なお引っかかるのは『貧民心理の研究』にあらわれている部落に対する発言である。『貧民心理の研究』は、彼の体験の中から生まれた画期的な研究なのだが、部落については人種起原説に立っていて誤りか多い。その点か非難されるのだが、その時代の産物であった。キリスト教徒としての賀川豊彦については、教派によって評価が分かれるらしいが、兵庫部落問題研究所事務局長であるとともに牧師でもある著者は、賀川豊彦に対して、もっともよき理解を示している。(一八〇〇円)




出版ニュース』(出版総合誌)1988年8月


           賀川豊彦と現代 鳥飼慶陽


 社会事業をはじめ学校、生協、宗教など、賀川豊彦の活動は多岐にわたる。今年はその賀川生誕百年。写真集や書誌の刊行、さらに映画化や演劇化も企画されている。しかし、こうした流れとは別に近年、キリスト教界では「賀川豊彦と部落問題」が大きな問題になっている。つまり「差別者・賀川」として・・・。その原因とされるのが賀川の部落「人種起源説」だが、この「差別者・賀川」とする断罪は、「考え方」と「生き方」を混同していると著者はいう。


 著者は、賀川断罪の出所である著書『貧民心理之研究』を検討するとともに賀川の実践の一端を明らかにし、これらをふまえて“キリスト教界の「賀川問題」”“賀川豊彦と現代”について言及する。


 著者は神戸にある番町出合いの家牧師。


 (B6判・二〇四頁・一八〇〇円・兵庫部落問題研究所=〒650神戸市中央区元町通七‐二―一・五月刊)