「宗教・人権・部落問題―「対話の時代」のはじまり」(1997年、全国部落問題夏期講座)


宮崎潤二さんの作品「小説『ドブ板のうた』の挿絵」



        第46国全国部落問題夏期講座


       (分科会⑦「対話の時代」のはじまり)



          宗教・人権・部落問題


                             鳥飼 慶陽


       番町出合いの家牧師 兵庫部落問題研究所事務局長。57歳
    著書『部落解放の基調−宗教と部落問題』『賀川豊彦と現代』など。



 ●おもいがけないことに、今年発行した小さなブックレットヨ対話の時代」のはじまり 宗教・人権・部落問題』の前半のタイトルが、ナント新しい分科会の名前になり、しかも、そこで展開することのできた後半のタイトルで、分科会報告をさせていただくことになった。そして、アイヌ文化のことや「日本と韓国」のことをここで学び、新しい出合いを経験できる。


 ●これまで部落問題解決の歩みのなかで、自由に開かれた「対話」を通して一歩一歩、お互いに変革をとげ、喜びを分かち合えるようなことは、残念ながらほとんど稀なことであった。そんななかで、岡山県津山市全解連が一七年間も積み重ねてきた′「本音で語る−部落問題シンポジウム」の実践は、愉快なドラマを生んでいるようである。


 ●「部落問題解決の最終段階」といわれる現在、遅巻きながらではあるが、運動の実践的な場面でも、また部落間題研究の分野にあっても、「対話」への積極的な意欲が期待されている。「対話」は馴合いや野合ではない。策略的に作為したり暗に強制したりしてできることでもない。ひとりとして同じ人間はいない。お互いに意見は異なり、立場を異にしている。それを「自由に真剣に」語り合い、学び合う。


 ●前記の小着では「万人の事としての宗教・人権」について、基礎的な理解をできるかぎり分かり易く展開してみた。「宗教」にしても「人権」 にしても、わたしにじかに直接することであるのに、意外に唆昧である。「二一世紀は人権の世紀」といわれるが、現状のままでは危ういかぎりである。


 ●部落問題はいま大転換の時である。「行政」も「教育」も、そして「解放運動」も−「新しい時代」を確認しつつ「対話の時代」を共にエンジョイ(享有)したい。